2023-06-02
不動産価格の高騰をもたらした、住宅ローン金利の低下。諸外国が軒並み金利を引き上げる中、日本は依然としてほとんど金利が上がっていません。むしろ、変動金利は引き下げ競争が激化し、史上最低水準を更新したほどです。
本記事では、日本の住宅ローン金利が上がらない要因と今後の見通しについて解説します。
金融緩和を継続している日本ですが、2022年末には長期金利の変動幅を±0.25%から±0.5%に引き上げました。これを受け、2023年頭には各金融機関が住宅ローンの固定金利を引き上げ。「日本もいよいよ金利が上がるか……?!」と身構えた方も多いことと思いますが、その引き上げ幅は大きくありませんでした。
また、長期金利が影響するのは、住宅ローンの固定金利のみ。変動金利は金融政策の影響を受けるため、緩和が続いている今、変動金利が上がるということもありませんでした。
金融緩和政策を始め、約10年にわたって推進してきたのは、日本銀行の黒田東彦総裁(当時)です。黒田氏が任期満了を迎えた2023年4月、経済学者という異例な経歴を持つ植田和男新氏が新総裁に着任。金融緩和の火付け役であった黒田氏が退くことで政策に転換が見られるか注目されました。
2023年4月末、植田新総裁になってから初めての金融政策決定会合が開かれました。ここで植田総裁は、大規模金融緩和策の維持を決定しています。これまで日本が目指してきた「賃金の上昇を伴う形で2%の物価安定」を目標に据え置く方針です。
日本銀行によれば、2023年度の消費者物価指数の見通しは+1.8%、2024年度は+2.0%、2025年度は+1.6%としています。この見通し通りだとすれば、2024年度には「2%」を達成
長期金利の変動幅引き上げや黒田総裁の退任があったことから「金利が上がる」といった声も少なくありませんでしたが、蓋を開けてみれば金利が上がることはなく、むしろ4月には変動金利が史上最低を更新しました。
インフレが加速する欧米諸国では、金融引き締めに転じ、住宅ローン金利も上昇しています。一時期より下がったものの、5月末の米国の30年物固定住宅ローン金利の平均は6.57%。日本と諸外国の金利差は、広がっています。
仮に、先ほどと同様に3,000万円の物件を35年ローンで金利6.57%で借り入れた場合の返済額を計算してみると、毎月の返済額は182,690円。総返済額は、7,600万円を超えます。このことからも、いかに日本の金利が低いかおわかりいただけるのではないでしょうか。
日経平均株価は5月末、3万円の大台を超え、バブル期以来の高値を記録しました。先進国でも唯一、資産の安定性と金利の低さを維持している日本。海外投資家から日本資産への注目度はますます高まり、株価高騰にも寄与しているものと考えられます。
不動産価格は、日経平均株価とほぼ連動するものです。すなわち、株価の高騰は、不動産価格のもう一段の高騰を示唆するものである可能性があります。
まとめ
諸外国が金利を引き上げる中、日本はいまだ低金利を維持しています。その理由は、日本銀行が目標に掲げる「賃金の上昇を伴う形で2%の物価安定」が達成されていないからです。
株価が上がる中、不動産の価格にももう一段の高騰が見られる可能性があります。一方で、史上最低の低金利の今は、不動産の買い時ともいえるでしょう。売り手市場でありながらの、買い手市場。稀有な時期にある今、あらためて不動産の売り時・買い時を検討してみましょう。