変動金利0.1%台突破!日本の住宅ローン金利はなぜ上がらない?

変動金利0.1%台突破!日本の住宅ローン金利はなぜ上がらない?

不動産価格の高騰をもたらした、住宅ローン金利の低下。諸外国が軒並み金利を引き上げる中、日本は依然としてほとんど金利が上がっていません。むしろ、変動金利は引き下げ競争が激化し、史上最低水準を更新したほどです。


本記事では、日本の住宅ローン金利が上がらない要因と今後の見通しについて解説します。



長期金利の変動幅を引き上げと日銀総裁の交代

金融緩和を継続している日本ですが、2022年末には長期金利の変動幅を±0.25%から±0.5%に引き上げました。これを受け、2023年頭には各金融機関が住宅ローンの固定金利を引き上げ。「日本もいよいよ金利が上がるか……?!」と身構えた方も多いことと思いますが、その引き上げ幅は大きくありませんでした。


また、長期金利が影響するのは、住宅ローンの固定金利のみ。変動金利は金融政策の影響を受けるため、緩和が続いている今、変動金利が上がるということもありませんでした。


4月に日本銀行総裁が交代も「現状維持」

金融緩和政策を始め、約10年にわたって推進してきたのは、日本銀行の黒田東彦総裁(当時)です。黒田氏が任期満了を迎えた2023年4月、経済学者という異例な経歴を持つ植田和男新氏が新総裁に着任。金融緩和の火付け役であった黒田氏が退くことで政策に転換が見られるか注目されました。


2023年4月末、植田新総裁になってから初めての金融政策決定会合が開かれました。ここで植田総裁は、大規模金融緩和策の維持を決定しています。これまで日本が目指してきた「賃金の上昇を伴う形で2%の物価安定」を目標に据え置く方針です。


日本銀行によれば、2023年度の消費者物価指数の見通しは+1.8%、2024年度は+2.0%、2025年度は+1.6%としています。この見通し通りだとすれば、2024年度には「2%」を達成


することに。そこまで、あるいは2%が定着するまで金融緩和継続を貫くのか……今後も日本銀行の動きが注目されます。

それでも上がらない?!むしろ引き下げ競争が激化している住宅ローン金利

長期金利の変動幅引き上げや黒田総裁の退任があったことから「金利が上がる」といった声も少なくありませんでしたが、蓋を開けてみれば金利が上がることはなく、むしろ4月には変動金利が史上最低を更新しました。


史上最低金利更新!「0.196%」の衝撃
2023年4月、auじぶん銀行は借り換え向けの変動型の住宅ローン金利を引き下げ、0.196%としました。変動型の住宅ローン金利が0.2%を切り、0.1%台になるのは初めてのことです。その他の金融機関も0.3〜0.5%程度で推移しており、金利引き下げ競争が激化しています。

3,000万円の物件を35年ローンで0.196%・0.5%・1.5%の金利で借り入れた場合の返済額の違いは次のとおりです。0.5%や1.5%も、過去や諸外国と比較すればかなり低い水準ですが、0.196%であれば35年の利息はわずか100万円ほどとなります。

金利

月々の返済額

総返済額

0.196%

73,912円

31,043,040円

0.5%

77,875円

32,707,500円

1.5%

91,855円

38,579,100円


固定金利も2023年度から低下

2022年末の長期金利の変動幅引き上げを受け、徐々に上昇していた住宅ローンの固定金利ですが、2023年度に入ってから低下傾向にあります。5月のフラット35の最低金利は、1.830%。米国の固定金利が6%を超えていることを考えれば、とてつもなく低い水準だといえるでしょう。

各国と日本の金利差がもたらすもの

インフレが加速する欧米諸国では、金融引き締めに転じ、住宅ローン金利も上昇しています。一時期より下がったものの、5月末の米国の30年物固定住宅ローン金利の平均は6.57%。日本と諸外国の金利差は、広がっています。


仮に、先ほどと同様に3,000万円の物件を35年ローンで金利6.57%で借り入れた場合の返済額を計算してみると、毎月の返済額は182,690円。総返済額は、7,600万円を超えます。このことからも、いかに日本の金利が低いかおわかりいただけるのではないでしょうか。


日本の不動・資産への注目度はますます高まる
(出典:Google Finance

日経平均株価は5月末、3万円の大台を超え、バブル期以来の高値を記録しました。先進国でも唯一、資産の安定性と金利の低さを維持している日本。海外投資家から日本資産への注目度はますます高まり、株価高騰にも寄与しているものと考えられます。


不動産価格は、日経平均株価とほぼ連動するものです。すなわち、株価の高騰は、不動産価格のもう一段の高騰を示唆するものである可能性があります。


とめ

諸外国が金利を引き上げる中、日本はいまだ低金利を維持しています。その理由は、日本銀行が目標に掲げる「賃金の上昇を伴う形で2%の物価安定」が達成されていないからです。


株価が上がる中、不動産の価格にももう一段の高騰が見られる可能性があります。一方で、史上最低の低金利の今は、不動産の買い時ともいえるでしょう。売り手市場でありながらの、買い手市場。稀有な時期にある今、あらためて不動産の売り時・買い時を検討してみましょう。



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