2023-01-26
住宅ローン金利と不動産の価格や需要は、密接に関わっています。ここ10年ほど、不動産市場は取引数、価格ともに「バブル」と言えるほどの好調を見せていました。これは、千葉県も成田市も例外ではありません。しかし、2023年は住宅ローン金利の上昇により、この「バブル」が弾けるおそれがあります。
大手銀行が30日発表した2023年1月の住宅ローン金利は、大手5行の平均基準金利で22年12月より0.24%高い3.70%となった。13年8月以来、約9年半ぶりの高水準。日銀が金融政策を修正して長期金利が上昇したため、各行が長期金利に連動する固定金利を引き上げた。利用者の9割が選ぶ変動金利は各行とも据え置いた。(出典:2022年12月30日経新聞)
2022年末、今後の不動産市場に大きく影響するニュースが伝えられました。上記記事の通り、大手銀行は住宅ローンの固定金利を相次いで引き上げ。10年前に並ぶ水準にまで達しました。
固定金利が上がった理由は、日本銀行による10年国債利回りの上限引き上げにあります。これまで「0.25%」だった上限を0.25%引き上げ「0.5%」にしたことにより、長期金利の影響を受ける住宅ローンの固定金利が引き上げられてしまったのです。
22年末の「実質利上げ」を受け、2023年は一気に利上げが進むことも考えられましたが、年明け23年1月の金融政策決定会合で日銀の黒田総裁は「大規模な金融緩和策を維持する」と発表。加えて「長期金利の変動幅をさらに拡大する必要があるとは考えていない」と発言しました。住宅ローンの固定金利および変動金利は、2月に大きく変動することはないと見て問題ないでしょう。
1月の会合で「緩和の維持」の姿勢を見せた黒田総裁ですが、今年4月に任期を迎えます。よって、次回3月の金融政策決定会合が黒田総裁にとって最後の会合。ここで後任のために金利引き上げの道筋を作るのか注目されますが、1月の会合では「後任のためにというのは僭越(せんえつ)。そういった考え方はない」との発言が見られました。
とはいえ、22年末の実質的な利上げも“サプライズ”であったことから、3月に金融政策の転換が発表される可能性はないとは言い切れません。いずれにしても、日本銀行の総裁が変わるタイミングでなんらかの変化があるとの見方が強いのが事実です。
2022年から2023年にかけて、世界的に「金融の引き締め=利上げ」の動きが見られました。金利が上がれば不動産価格は下がる……というのが市場のセオリー。各国の不動産市場は今、どうなっているのでしょうか?
アメリカは急激なインフレを抑制するため、2022年に7度の利上げを実施し、1年間で4%も金利が引き上げました。アメリカの住宅ローン固定金利は一時、20年ぶりに7%を超え、不動産価格は大きく下落しています。22年の中古住宅の販売数は、前年比−17.8%と大幅減。リーマンショック当時と同じ水準にまで達しています。
日本より一足早く金融引き締めに舵を切った韓国では、0.5%だった政策金利を急激に3.5%まで引き上げたことにより、不動産価格の暴落が起きています。住宅ローン金利は、8%を超えるケースもあるといいます。韓国でも、コロナ禍で日本同様の「不動産バブル」が起きており、コロナ禍前から現在に至るまでの数年間、不動産価格の変動が非常に大きくなっています。
中国は、各国とは違う動きを見せています。中国経済における不動産市場が占める割合は非常に高く、これまで加熱しすぎた不動産価格の高騰を抑える「不動産バブル処理」のための規制強化が進んでいました。しかし、2022年には、ゼロコロナ政策や新型コロナウイルスの感染急拡大などによる景気減退および不動産不況を刺激するため、利下げがみられています。加えて、地域の販売実績に応じて住宅ローン金利の引き下げを認めるなどして、不動産市場の正常化に向けた施策が講じられています。
各国が利上げする中、いまだ金融政策転換の姿勢を見せない日本。とはいえ、2023年度に入ってからは徐々に金利が上がっていくことが見込まれます。金利上昇局面には、どのように不動産の売り時・買い時を考えればいいのでしょうか?
金利が上がれば、アメリカや韓国の不動産市場のように価格は下がるでしょう。これは、金利が上がることで同じ返済額でも借り入れられる金額が下がるということとともに、購買意欲が減退するからです。しかし、不動産価格の暴落が見られているのは急激な利上げをしたエリア。日本でも1月に実質的な利上げが見られましたが、引き上げられたのは住宅ローンの固定金利に影響する長期金利のみであり、0.25%と引き上げ幅が小さかったことから、不動産市場への影響は限定的であると考えられます。
(出典:住宅金融支援機構)
現に、23年1月の住宅ローンの変動金利は引き上げられるどころか、もう一段、引き下げた金融機関も見られたほどです。近年は、上記グラフのように変動金利を選択する人が7割を超えており、変動金利が低いうちはまだまだ不動産価格に大きな影響は出ないものと推測されます。変動金利であれば、まだまだ0.3%前後で借り入れることができます。これは世界的にも、日本の歴史を見ても“史上最低”といえる水準です。土地や戸建、マンションの売却を検討している方は、この時期を逃すことなく売り時を検討しましょう。
「金利が上がって不動産価格が下がれば買い時!」と考える方も少なからずいらっしゃるのではないでしょうか?たしかに現金キャッシュで購入するのであれば、売却価格だけを見て買い時を判断すれば良いでしょう。
しかし、多くの方はローンを組んで不動産を購入するはず。金利が変われば、下記のように月々の返済額、総返済額は大きく変わります。たとえば、金利が1%上がって価格が10%下がったとしても、それは果たして買い時なのか……?購入価格だけでなく「返済額」から買い時を判断することも大切です。
●3,000万円を返済期間35年・元利均等返済で借り入れる場合の返済額
これまで約10年続いた金融緩和政策と不動産価格の高騰。この動きに変化が見られる可能性が高いのが、2023年です。これまで不動産価格が高騰していたことにより、売り時・買い時を見定めていた方も多いことでしょう。当然ながら、売主様は「高く売りたい」、買主様は「安く買いたい」と思っているものです。両者の利益は相反するように見えても、低金利であれば両者の利益は一致します。住宅ローンの変動金利は“史上最低”といえる水準でありながらも、金利上昇が見込まれる今、あらためて不動産の売り時・買い時を考えてみましょう。