2022-12-01
2022年10月、ドル円レートは一時1ドル=150円代に乗せました。歴史的な円ドルに際し、物価高や人材の流出などさまざまなことが懸念されますが、円安は日本の不動産市場にも大きく影響します。
円安は、決して悪いことだけではありません。ドル圏の人からすれば、円安によって日本の商品や株、不動産の価格が落ちたも同然です。安く良いモノであれば、円安を好機と見て「爆買い」が起こる可能性があります。
「円安」とは、円の価値が落ちることを指します。2021年10月のドル円レートは1ドル=110円ほどだったため、円の価値は3割ほど低下したことになります。これはつまり、これまで1,000万円だった不動産の価値が、ドル圏の人からすれば700万円になるようなもの。いわばバーゲンセール状態です。
そもそも、日本の不動産は他の先進国と比較して格安でした。さらに円安によって割安感が高まったため、海外投資家にとって日本の不動産の魅力はより一層増したわけです。当然ながら、外国人が自己居住用として日本の不動産を購入することは稀なので、海外投資家が投資目的で日本の不動産を購入します。
いわゆる「爆買い」が起これば、不動産価格は高騰することもあるでしょう。それは、不動産価格が需要と供給のバランスによって決まるためです。
ただし、海外投資家が購入するのは一部の不動産に限られます。円安とはいえ、日本の田舎の不動産を購入しても投資効果は低く、その恩恵を受けられません。つまり、円安を受けた外国人の爆買いによって高騰する可能性があるのは、投資効果の高い首都圏や地方都市など限られた優良物件に限定されるのです。
日本の不動産市場では、すでに二極化が進んでいます。二極化とはすなわち、売れる不動産と売れない不動産、価値が上がる、あるいは維持できる不動産と価値が下がり続ける不動産の格差です。円安による爆買いが起きれば、この二極化はさらに進行するでしょう。
円安によって引き起こされるのは、不動産価格の高騰だけではありません。円の価値が落ちるということは、ドルの価値が上がるということ。その分、輸入品の割高感は高まります。家の建材として多用される「木」は、国産のものもありますが多くは外国産です。また、木材だけでなく、あらゆる建材を運ぶ物流コスト、住宅設備に使用される半導体、高騰し続ける電気代なども建築費の高騰に直結します。円安のみならず、コロナ禍やウクライナ情勢によりさまざまなモノが高騰しており、それが物件価格や建築費に転嫁されている状況です。
そもそも、なぜこれほどまでに円安が進んでいるのでしょうか?
円安の要因は、米国との金利差にあります。深刻化するインフレを抑制するため、米国では金利を引き上げています。一方、日本でも一定の物価高は見られるものの、粘り強く金融緩和政策を続けています。このため両国に大きな金利差が生じ、円の価値が下がってしまっているのです。
「日本は金利を上げないのか?」
これは多くの方が抱える疑問でしょう。日本の消費者物価指数は9月に3%を超えています。欧米諸国と比較すれば小規模ではありますが、本来であればインフレ率より金利のほうが低い状況は不自然です。
日本が金利引き上げに踏み切らない要因は、大きく2つ。1つは、日本銀行の総裁の黒田氏の意向です。そもそも今の金融緩和政策を始めたのも、黒田氏。物価上昇に賃金の上昇が追いついていないなどの理由で「当面、金利は上げない」との姿勢を貫いています。
そしてもう1つの理由は、コロナ禍で大量に発行された国債の存在です。日本銀行は国債を多く買い込んでおり、金利引き上げによって国債の価値が下がれば債務超過に陥ってしまいます。これもまた、日本が金利引き上げに踏み切れない要因の1つだと考えられます。
米国との金利差
歴史的な円安
金利を超えるインフレ率
日本はこのような状態を野放しにしているのではなく、今は様子を伺っている段階にあるものと考えられます。時期が来れば、日本もある程度、金利を上げざるをえないでしょう。
金利を上げる姿勢を見せない日銀の黒田総裁は、2023年4月に任期を終えます。「総裁が変わるタイミングで日本も金利を上げるのではないか」との声は大きく、2023年度が日本の金融政策の転換期となる可能性があります。日本の金利が上がっていくことで、円安もある程度は緩和されるでしょう。
とはいえ、国債の問題は解消しておらず、賃金も一向に上がる気配を見せない中「日本は大幅に金利を上げることはできない」との見方があるのも事実です。
「円安」「金融政策」と難しい話が続きましたが、これから不動産の売買をする方にとって、これらは決して無縁な話ではありません。金融を引き締めるということは、金利が上がるということ。これは、住宅ローン金利にも影響します。
金融大国である米国の金利に影響を受ける日本の住宅ローン固定金利は、すでに上昇傾向が見られています。また、日本の金融政策に影響を受ける変動金利も、金融引き締めに舵を切れば徐々に上がっていくものと考えられます。
住宅ローン金利が上がると、不動産需要は落ち込みます。その理由は、金利が上がれば同じ借入額でも返済額が増えてしまうからです。これまで4,000万円ほどの予算があった人の予算が3,500万円となり、3,000万円となり……中には「金利が高いから」という理由で購入を見送る人も出てくるかもしれません。
不動産の「購買意欲」は、金利水準次第です。不動産価格は2013年から右肩上がりで高騰していますが、この要因こそが金融緩和政策。金融緩和政策の終わりは「不動産バブル」の終結をもたらすかもしれません。
歴史的な円安を引き起こしている要因は、金融引き締めに舵を切った米国と粘り強く金融緩和を続けている日本の政策の違いです。米国の金利の影響を受ける日本の住宅ローン固定金利は徐々に上昇しており、日本銀行の総裁が変わる2023年度には変動金利も上がっていく可能性があります。
住宅ローン金利が上がれば、返済額が上がり、不動産の需要は下がります。不動産を好条件で売買するため、今後はしばらく金利水準および金融政策を注視する必要があるでしょう。
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